数日後にリリースされた編集版では、言い間違いのあったネタそのものがカットされるという措置が取られた。日本向けには、日本語字幕もつけられ(クレジットには6人の名前)、その圧倒的なスピード感からも、ネットフリックスの本作にかける意欲が伝わる。
上記の「トチり」こそあったものの、多くのメディアは高評価を並べた。たとえば『ニューヨークタイムズ』誌は、
「クリス・ロックは一年後に反撃の平手打ちを激しく食らわせに戻ってきた」
と評し、本作を「魅力的で笑える」と褒め称えた。
では、具体的に内容を見ていこう。タイトルは『Selective Outrage(邦題は『勝手に激オコ』)』。邦題だけでは、そのニュアンスが正確に伝わりづらいが、”Selective Outrage”というのは「恣意的な暴力、怒り」という意味。つまり「相手を選んでの怒り」という含意になる。アメリカでは、昨今の分断の中で、属性や政治的イデオロギーによって選り好みした上で、「他者」に対して敵意をむき出しにする姿勢を指してよく用いられる。しかし、ロックの公演タイトルの場合、多くの人々がウィル・スミスのビンタという「暴力」がクリス・ロックというコメディアンを「選択」して行われたという趣意にたどり着く。
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