“罠”という言葉から連想するのは、誰かを貶める手段だ。ただ、それが自身の利ではなく、苦しめられている弱者を救うために仕掛けられているとしたら……。3月27日に最終話を迎えたカンテレ制作・フジテレビ系列放送の月10ドラマ『罠の戦争』は、主人公・鷲津亨(草彅剛)の決意に込められた正義の在り方を考えさせられる放送となった。権力に憑りつかれた代議士に残されたダークヒーローとしての道を全うする姿に、鷲津の変化を追ってきた視聴者は涙したことだろう。

 永田町で繰り広げられる政治バトルを描いた本作品。日々のニュースで目にする政治の裏側、ともすると一般市民にとっては周知のことと言えるドロドロとした利権争いが主題のため、「まあ、政治ってそういうものだよね」と観ていた視聴者もいるはずだ。最終話で感じたのは、私利私欲にまみれたぬかるみを歩いてきた鷲津は疲労困憊していたということだ。息子の転落事故の隠蔽に関わった元民政党幹事長・鶴巻憲一(岸部一徳)をはじめとした政界の悪人への復讐を果たした時点で、代議士を辞職する、または国民第一の政治スタンスを貫いていれば、自身が傷つくことはなかった。そこで立ち止まれなかったのは、鷲津自身が悪人に巣食っていた“権力の魔力”に魅了されていたからなのだ。