「大真面目」だからこそ面白いコメディに
『ウェディング・ハイ』は、「本当に面白いコメディは頭の良い人たちが作っている」ことを改めて思い知らされる。
モノローグを多用することでクセの強いキャラクターたちの「思考のズレ」を観客に知らせていき、時系列を入れ替えることで同じ時間の「裏側」も見せていく、群像劇として考え抜かれた構成がされているからだ。
加えて、クセの強いキャラクターを演じる超豪華キャストたちが、実は全員「大真面目」であることも重要だ。とある理由から主賓挨拶に挑む上司を演じる高橋克実や、とんでもない方向のVTRを作る映像ディレクターの青年役の中尾明慶、はたまた謎の男に扮する向井理、その他、余興に取り組む親類たちが、客観的にはバカバカしくも思えることであっても全力投球する「本気」が、笑えると共に感動も呼ぶのだ。
小学生レベルのギャグでさえも「結婚式讃歌」へとつながる
さらなる感動は、「小学生レベルのしょうもないギャグ」や「どうでも良さそうな友人たちとの会話」ですらも伏線として見事に活かされていることだった。誰かにとっては取るに足らないことでさえも、誰かにとっての人生の転機につながっていくことも、この世界にあり得る「奇跡」なのではないかと思わせたのだから。
さらに、笑いの波状攻撃を浴び続け、結婚式という一種のお祭りを堪能した先にあったのは、爽快感たっぷりの「結婚式讃歌」だった。 新郎新婦の人生の門出を祝福することが、参加者たちにとっての幸福にもなる。それは当たり前のことではあるが、意外と忘れがちで、尊いものなのだと、本作は教えてくれていた。
何より、初めこそ面倒臭いものとしても描かれていた結婚式が、終わってみれば心から「結婚式って本当に素晴らしい!」と心から思えるようにもなっていたのだから。