『ウェディング・ハイ』が3月12日より公開される。結論から言うと、本作は「こういう邦画コメディを待っていた!」と心から思わせてくれた傑作だった。
©︎2022「ウェディング・ハイ」製作委員会(以下、同じ)
魅力たっぷりのキャラクター、巧みな伏線回収、何より「笑いに大真面目」な作り手の姿勢など、とにかくエンターテインメントとして面白い要素が揃っているので、万人におすすめできる。超豪華キャストの持ち味を活かした配役も完璧なので、それぞれのファンもきっと満足できるだろう。さらなる魅力を記していく。
【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます
結婚式に至るまでの「面倒臭さ」も笑いになる
本作のメインとなるのは後述する結婚式当日のドタバタ劇だが、その日を迎えるまでの新郎新婦の「準備」もリアルに描かれていることも重要だ。具体的には、2人は「結婚式の招待状をどこまでの範囲の人に送ればいいのか?」といった“面倒臭さ”にも直面していくことになる。
その面倒臭さをよりいっそう面白くするのが、「流されやすい新郎」を演じた中村倫也のリアクション。例えば、新婦役の関水渚は小道具の1つ1つにこだわっていて、事あるごとに相談してくるのだが、彼は本音ではどうでもいいと思ってしまうのである。
もちろん彼は新婦を心から愛しているし、結婚式もできる限り良いものにはしたいと思っているので、そんな態度を表に出してはいけないと自制し、なんとか真摯に答えようとはしているのだが……それでも本音がちょっとだけ漏れてしまうおかしみが、中村倫也の表情や一挙一動にあったのだ。
中村倫也に萌えて感情移入しまくれる理由
他の場面でも、中村倫也演じる新郎は事を荒立てないように、慎重に言葉を選ぼうとしたり、妙な出来事に対しても真っ当に対応しようとするのだが、それでもズレた回答をしてしまったり、結局は流されるがままになってしまったりする。
その様がなんともかわいらしくて愛おしく、有り体に言って萌える。「結婚式に臨む男性って、こうなのかもなあ」とそのリアルさに笑いつつも、大いに感情移入もさせられるのは、中村倫也というその人の親しみやすさもあってこそだろう。
その「男女の結婚式への向き合い方のズレ」はコメディとして面白いだけでなく、これから結婚式に臨む人にとっては、「お互いの気持ちも知ることで、2人にとってよりよい結婚式を考えられる」きっかけにもなるだろう。結婚式へのこだわりがお互いに強すぎるとケンカに発展しかねないが、劇中で流され続ける中村倫也のように「相手に合わせる」という妥協も、実は悪くはないとも思えるからだ。
そして、表向きには天真爛漫だけど複雑な心持ちにもなっていく新婦の関水渚と、流されやすいけど優しさに溢れた新郎の中村倫也が本当に理想的なカップルにも見えるので、2人を祝福しようと結婚式に集まる参加者の気持ちに、心から同調できるようにもなっている。