良い意味で“不敵さ”を感じさせる柄本佑のハマり役

中村倫也が“爬虫類系”の魅力を放つ。『ハケンアニメ!』が非リア充に希望を与えるワケ
(画像=『女子SPA!』より引用)

吉岡里帆は「どんなに努力しても思うように成果が出ない、上手くいかないという苦しみ」を抱えた自身の役に「労をねぎらいたい」想いも強く持ったのだそう。多くの人に響くキャラクターになったのは、リアルな仕事の現場を踏まえ、吉岡里帆自身が大いに思い入れができたおかげもあるのだろう。

 そして、やり手ではあるが、彼女を振り回してしまうプロデューサー役の柄本佑との対立も興味深く観られるだろう。彼は矢継ぎ早に話を続けるひょうひょうとした役で、その一方でビジネスマンとして冷徹かつ真っ当に仕事をしているように見え、良い意味で“不敵さ”を感じさせる柄本佑にとってのハマり役だ。

冷徹でダウナーなトーンがマッチする理由

中村倫也が“爬虫類系”の魅力を放つ。『ハケンアニメ!』が非リア充に希望を与えるワケ
(画像=『女子SPA!』より引用)

 本作でもう1つ面白いのは、中村倫也の魅力が五臓六腑に染み渡るサスペンス映画『水曜日が消えた』(2020)の吉野耕平が監督を務めたこともあって、意外にも“冷徹”で“ダウナー”なトーンで展開していくことだ。劇中では『新世紀エヴァンゲリオン』をネタにしたセリフがあり、早めのテンポの会話劇も含め庵野秀明監督に近い作風にも感じられる。

 だが、そのトーンこそが『ハケンアニメ!』の内容にはマッチしている。アニメ製作は地道な作業の積み重ねであるし、劇中ではクリエイターとしての情熱がどれだけあっても宣伝方法などの“大人の事情”と対立してしまうこと、「好きという情熱を内に溜め込む」様も描かれているため、暗めなトーンが登場人物の感情をそのまま表しているようにさえ見えるのだ。

 そして、そのダウナーなトーンや作風は、非リア充だと自分を卑下する人にも向けられていると言ってもいい。前述した中村倫也演じる天才監督の主張はもちろん、後の小野花梨演じるアニメーターと工藤阿須加演じる観光課職員のパートでは、リア充への嫉妬心も踏まえた、自身を非リア充だと思い込んでいる人のエールになる場面もあるのだから。