辻村深月による小説を原作とした実写映画『ハケンアニメ!』が5月20日から公開されている。タイトルの「ハケン」を漢字で書くと「覇権」、一定の時期にもっとも多くの売り上げまたは人気を獲得したアニメのことだ。

中村倫也が“爬虫類系”の魅力を放つ。『ハケンアニメ!』が非リア充に希望を与えるワケ
(画像=『女子SPA!』より引用)

©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

 本作はその覇権を巡ってのアニメ業界でのバトルが描かれる“お仕事ムービー”であり、アニメが好きな人はもちろん、仕事をする人すべて、さらには“非リア充”だと自分を卑下する人にもエールを送る、万人向けの優れたエンターテインメントに仕上がっていた。

 ここでは、メインキャストの魅力を筆頭に見どころを紹介しよう。なお、本編のエンドロール後には重要なおまけがあるので、これから鑑賞する人は最後まで席に座っておいてほしい。

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「こういう人いるいる」と思える実質4人の主人公

中村倫也が“爬虫類系”の魅力を放つ。『ハケンアニメ!』が非リア充に希望を与えるワケ
(画像=『女子SPA!』より引用)

 あらすじを紹介する。公務員からアニメ業界に飛び込んだ斎藤瞳(吉岡里帆)は念願の監督デビューが決まり、がむしゃらに仕事に打ち込もうとするものの、やり手のプロデューサーの行城理(柄本佑)に振り回される日々が続いていた。

 一方、ワガママでこだわりの強い天才アニメ監督・王子千晴(中村倫也)に8年ぶりの新作を作らせるべく、プロデューサーの有科香屋子(尾野真千子)は奔走していた。2人の監督のアニメは同時間帯にテレビ放送されることになり、真正面から覇権をかけて対決する。

 映画の主人公は実質的に4人いると言っていい。対照的な性格の監督の2人と、それぞれを振り回すまたはマジメに補佐するプロデューサーだ。それぞれが極端なキャラクターではあるが、「周りにこういう人いるいる」と楽しむこともできるし、はたまた自分自身を重ね合わせることで、存分に思い入れもできるだろう。

実は繊細な役柄にハマる中村倫也

中村倫也が“爬虫類系”の魅力を放つ。『ハケンアニメ!』が非リア充に希望を与えるワケ
(画像=『女子SPA!』より引用)

 中村倫也演じる天才監督はハッキリ言って変人だ。公の場でギョッとするような批判を言い放つし、常識外れの行動も多い。だが、胸に秘めたアニメへの想いはアツく、アニメが「現実を生き抜く力になる」と心の底から信じていて、その力はいわゆる非リア充の自分や他の誰かにも届くと堂々と主張している。

 中村倫也は自身の役を「わがままな子どものようでありながら、実は繊細なところもあり、周りのこともよく見ている。それらをひっくるめて監督という立ち位置にいるので、わざと傍若無人に振舞っている」と分析している。後述する吉岡里帆演じる新人監督とは、別ベクトルの不器用さを持ち合わせているのだ。

 中村倫也は善良な役からクズ男まで幅広く演じられる俳優であるが、今回は良い意味で“鼻持ちならなさ”や“爬虫類系”のヌメっとした印象、それでいて決して悪人とは言えない役柄にピッタリとハマっている。中村倫也というその人が持つ清廉潔白なイメージも、表面上はクセが強く内面から魅力を放つような今回の役柄に、完全にプラスに働いたのではないか。