◆「この国の司法は正しく機能していない。すでに危機なんです」

 次に『エルピス』。無実の男性に連続殺人の罪を被せるよう指示した黒幕は、副総理の大門(山路和弘)だった。彼のスキャンダルをニュース番組内で報じようと計画している浅川に、大門と“仲の良い”齊藤(鈴木亮平)が放ったのが次のセリフだ。

エルピス ―希望、あるいは災い―
画像:関西テレビ/フジテレビ『エルピス ―希望、あるいは災い―』公式サイトより
「国の副総理大臣が強姦事件をもみ消し、被害者が自殺した。君が今夜そのニュースを報じれば望み通り大門は失脚する。しかし、事はそれでは終わらない。政界全体にもまた最大規模の激震が走る。内閣総辞職どころか政権交代もありうる。今これほど世界情勢が緊迫している状況でそんな事態に陥ることが、どれほど危ういことか君にも想像がつくはずだ。国政も司法も混乱を免れない」

 正しいことを言っている風ではあるが、「政権維持の前では一市民の強姦被害や自殺なんて小さな問題だ」と言わんばかりの頓珍漢(とんちんかん)な言い分でしかない。ただ、浅川は「確かに影響は計り知れない。でもどれも紛れもない真実なんです」と反論。「この国の司法は正しく機能していない。すでに危機なんです」と矛盾点を突き、救われた気持ちになった。