『LIVE the SPEEDSTAR』が、3月18日(土) に幕張メッセ国際展示場で開催された。
『LIVE the SPEEDSTAR』は、ビクターが毎年3月に幕張メッセで開催をしている『ビクターロック祭り』の特別版。ビクターエンタテインメント内のレーベルであるスピードスターレコーズが設立30周年を迎えたことを記念して、今年は星野源、斉藤和義、スガ シカオ、くるり、KREVAといった所属アーティスト15組が一堂に集うイベントとなった。
以下、各アーティストごとのオフィシャルレポートをお届けする。
<BARK STAGE>GRAPEVINE
『LIVE the SPEEDSTAR』、BARK STAGEのトップはGRAPEVINE。スピードスターに移籍したのは2014年だが──以前本人たちにきいたのだが──1997年にメジャーデビューする前の各レコード会社による争奪戦の時、最後まで残った2レーベルのうちのひとつがスピードスターだったという。それから17年を経てめでたく所属、となったわけである。
この日演奏した全7曲のうち、5曲目までがスピードスター移籍後のレパートリー。GRAPEVINE屈指のファンク・チューン「Alright」でスタートし、ねばっこさと軽快さが同居する「Evil Eye」へ。特に、3曲目「目覚ましはいつも鳴り止まない」と、4曲目「ねずみ浄土」、最新のデジタルシングルが続いたゾーンが、圧巻だった。こんなにメロウでソウルフルな曲と、こんなにどうかしてる曲を連打して、ライブのピークを作ってしまうロックバンド、GRAPEVINEだけだろう。オーディエンスも「ねずみ浄土」を待っていたことを、曲終わりの拍手の大きさが表していた。
サイケデリックで雄大な「Gifted」、初期の名曲「光について」を経てのラストで、サプライズあり。つじあやのが登場、共に「Shiny Day」を歌ったのだ。2005年に根岸孝旨がプロデュースし、GRAPEVINEがバックを務めたこの曲を、そのままの組み合わせでライブで聴ける、サビでつじあやののボーカルにハモリをつける田中和将を観れる、という機会、極めてレアだと思う。
Text:兵庫慎司
セットリスト
M1. Alright
M2. Evil Eye
M3. 目覚ましはいつも鳴りやまない
M4. ねずみ浄土
M5. Gifted
M6. 光について
M7. Shiny Day
スガ シカオ
「おはようございます! 楽しんでいくよ!」――力強い挨拶の声と共にスタートしたスガ シカオのライブ。オープニングを飾ったのは「Party People」。ファンキーに躍動するバンドサウンドと歌声が、ステージを見つめる我々のダンス衝動を掻き立てて止まない。観客たちが身体を一斉に揺らしながら放つ波動が、会場内の空気をみるみる内に温めていた。
「足元の悪い中、ようこそ! 短い時間だけど、たっぷり楽しませていくのでよろしく。次に歌うのは、なかなか人前で歌えないかわいそうな曲です(笑)。でも、今日は何の制約もないので」という言葉を添えて歌い始めた「バニラ」は、艶めかしい歌詞の描写が刺激的だった。そして「バニラ」に匹敵するくらいの妖しい風味を堪能させてくれた「19才」に続いて披露されたのは「Real Face」。作曲を松本孝弘(B’z)、作詞をスガが手掛け、2006年にKAT-TUNへ提供されたこの曲は、やはり圧倒的にかっこいい。エネルギッシュなバンドサウンドも抜群に冴えわたっていた。
「この間、アルバム『イノセント』が出まして。8年くらい前にSPEEDSTARに移ってきて、まだ新入生的な扱いです(笑)。ちゃんと一歩ずつ階段を上がっていこうかなと。次に歌うのは出たばかりの曲です」と紹介しつつ歌い始めた「さよならサンセット」。『イノセント』の中でも美メロが光っていた曲だが、ライブで聴いても胸に深く沁みた。続いてNHK総合『プロフェッショナル 仕事の流儀』のテーマソングとしてお馴染みの「Progress」も披露。そしてラストに届けられたのは「コノユビトマレ」。グルーヴィーなバンドサウンドに包まれながらギターを弾き、歌声を響かせるスガも心底楽しそう。掲げた腕を振りながら盛り上がる観客たちと一緒に幸福な空間を作り上げていた。
Text:田中大
セットリスト
M1. Party People
M2. バニラ
M3. 19才
M4. Real face
M5. さよならサンセット
M6. Progress
M7. コノユビトマレ
UA
「私はデビューして28年目に突入しているんですけど、最初から今までずっとスピードスターにいる者です。今日の(出演者の)中で、スピードスターではいちばん古株だということで、驚愕しております」と、後半のMCで自己紹介したUAが、BARK STAGE 3番目のアクト。1曲目「太陽手に月は心の両手に」を歌い始めた瞬間、その声の豊かさで、幕張メッセの空気が変わったのがわかる。次は最新アルバム『Are U Romantic?』から「お茶」。1996年の曲と2022年の曲が、違和感なく並ぶさまが楽しい。
続いて「情熱」、さらに「雲がちぎれる時」と、初期のヒット曲が惜しみなく放たれる。フロアのあちこちで両腕が挙がる。UAとコーラス隊ふたりの声とアクションが、絶妙にシンクロし続ける「AUWA」は、曲間を空けずにそのまま「TIDA」へと続いていく。途中までピアノだけで歌われた「プライベートサーファー」は、荘厳で、壮大で、まるでゴスペルのような、すさまじい美しさだった。
「このレーベルはね、ほんとに人として音楽を見てくれる、育ててくれるレーベルなんです。こういうレーベルが日本でしっかりと活躍できるように、見守っていてくださいね」という言葉から放たれたのは「微熱」。1年前のリリース時、朝本浩文の未発表曲か? と驚いた(GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーが書いたことを知ってさらに驚いた)この曲を、極上の歌と演奏で、最後に届けてくれた。
Text:兵庫慎司
セットリスト
M1. 太陽手に月は心の両手に
M2. お茶
M3. 情熱
M4. 雲がちぎれる時
M5. AUWA~TIDA
M6. プライベートサーファー
M7. 微熱
KREVA
KREBandの演奏が華麗に鳴り響いた後、ステージにKREVAが登場。「SPEEDSTAR、30周年おめでとうございます。その中でも新人の部類ですが、よろしくお願いします。KREVA!って呼んでもいいらしいよ。それだけで感無量。やっとだね。初めてライブを観る人、やっと会えたな」――素敵な言葉に早速胸が熱くなる。そしてサングラスを不敵に輝かせながら歌い始めた1曲目は「Finally」。昨年2月にリリースされたアルバム『LOOP END / LOOP START』でもオープニングを飾っていたこの曲は、粋なライミングが満載されている。こんなにも極上のラップを浴びたら、じっとしていられる人類がこの世に存在するはずもない。観客たちは体を揺らして踊り始めた。続いて「基準〜2019Ver.〜」も届けられたが、ビートを巧みに乗りこなしながら放つラップの切れ味が本当にすごい。“かっこいいラップとはこういうことだ!”と堂々と名乗りを上げるかのような姿に痺れてしまった。
「みなさんも声を出せるので、声を出せるような曲を持ってきました。ぜひとも参加してもらえたらなと。エンタテインメントの現場は、みんなの声がないと完成しない。みんなで作るものだと思います」というMCの後に披露された「パーティーはIZUKO〜2019Ver.〜」は、まさしく参加型の曲だった。《ねぇ パーティーはIZUKO》に対して《ここだ!》と元気いっぱいに返したくなる。そして「人生」と「居場所」は、会場のムードを瑞々しいものへと塗り替えた。こういう曲もKREVAのライブでいつも魅力を大いに煌めかせる。リリックの言葉の1つ1つに刻まれた深い情感を噛み締めながら、彼の表現力の幅を改めて実感した。
「みんなの声、存在のありがたさに気づかされる一方です。このままいろんなイベントが増えていくと思うけど、その時にまたみんなに会えたら嬉しいです。あと数曲で終わりですが、今日という日が特別な日になるように」――観客たちに感謝の想いを伝えたMCを経て、ライブはいよいよクライマックスへと突入していった。夏フェスを先取りするかのような爽やかな昂揚感を噛み締めさせてくれた「イッサイガッサイ〜2019Ver.〜」。最高のビートを徹底的に体感させてくれた「C'mon, Let's go〜2019Ver.〜」。そしてラストは「音色〜2019 Ver.〜」が飾った。《愛してんぜ 音色》という印象的な一節に表れている通り、音に対するラブソングとでも言うべきこの曲は、音楽愛に満ちた人々がたくさん集まっているこのイベントに実にふさわしかったと思う。ステージから届けられるサウンドに耳を傾けながら、「音楽って最高!」と心の底から感じることができた。
Text:田中大
セットリスト
M1. Finally
M2. 基準 ~2019 Ver.~
M3. パーティはIZUKO? ~2019 Ver.~
M4. 人生
M5. 居場所
M6. イッサイガッサイ ~2019 Ver.~
M7. C’mon, Let’s go ~2019 Ver.~
M8. 音色 ~2019 Ver.~