――改めて、『First Love』リリース時の宇多田ヒカルは、ほかの国産R&Bと比較して異なる点があるとしたら、それが何だったと思いますか?
DJ HASEBE まず、歌がうまい。歌声が特徴的である。歌詞やサウンド面、メロディの展開が独特で、キャラクターも際立っていたし、トータルバランスが秀でていたところじゃないかな。「歌がうまい=本格的でソウルフル」ではなく、柔らかい歌唱法で、より現代的だったしね。宇多田ヒカルの発声法というのは、日本国内でのブラックミュージック的なひとつのあり方を示したように感じる。
実は当時、僕もそうした歌い方について考えていて、だからこそBONNIE PINKと曲を作ったりしていたから。今はもう何周も回って「いろんなスタイルがあるな」と思うけど、そのアプローチの仕方に振り切ったスター性があり、一線を画す存在だったんじゃないかな。それまで存在していた枠を余裕で超えてしまったというか、単純にそこに大きな衝撃があった。
なので、宇多田ヒカルのヒットによって、自分はもっと違うところを開拓せねば、と思わせられたのも事実です。
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