◆傷だらけの映画人生
愛する人のために命がけで試合に臨んだ闘志あるボクサーを演じた『きみの瞳が問いかけている』(2020年)でも同じような役回りだったけれど、本来イケメンであるはずの自分の顔をあえて崩すことで横浜は、丸裸の演技を叩きつけてくる。
自分は俳優である。そう宣言するように横浜は、全身全霊で演技に打ち込む。まるでボクサーのような俳優である。そんな傷だらけの俳優像を考えると、『流浪の月』で演じた中瀬亮役もまた自ら身体に傷をつけたキャラクターだったと気づく。第46回日本アカデミー賞で優秀助演男優賞を受賞した亮役は、助演を好んで演じる現在の横浜にとって名誉ある勲章となった。
傷をつけた分だけ勲章は増える。その痛みを共有する存在として藤井監督がいる。ひとりの監督とひとりの俳優が歩んでいく。俳優・横浜流星の傷だらけの映画人生、彼が受けた傷の分だけ、作品は強くなる。予告編からすでに不穏な雰囲気漂う主演作にして藤井監督作『ヴィレッジ』(2023年)が4月21日から公開が控えている。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu