◆会心の決め技的演技
『インフォーマ』では、作品のトーンとして藤井監督の青の色味より暖色が強かった。それは夜の街の色を演出していた。横浜の瞳が漆黒に輝き、ふっくらとした唇が浮かび、ヴィヴィッドな色調がその後の悲劇性を強調するようでぞくぞくした。
横浜が演じる与太者の愛之介は、ポンコツと呼ばれながらも木原のことを深く慕っている。木原に呼ばれたらどこへでも駆けつけ、ひと仕事前には強い酒で乾杯する。実の兄である恭介(淵上泰史)が運転する車の助手席で酔っ払ってすやすや眠る愛之介の髪を風がなびかせ、嵐の前の静けさを感じさせる。
大企業の会長を成敗しに意気込んだ愛之介だったが、強大な敵の前にまったく歯が立たない。テーブルに投げつけられ、はだける黒のタンクトップが、『青の帰り道』で身に着けていたタンクトップの白よりも事態の深刻さを伝える。藤井監督作によって確実な変奏が試みられながら、横浜会心の演技が引き出される。タコ殴りにされ、試合後のボクサーみたいに腫れ上がった顔の横浜を見て、ただただ唖然とするゲスト出演回の結末だった。