◆“もっとも理想的な死”を見せてくれた最終話
では第1シーズンの最終回では何が強く描かれたのか。杉下(風間俊介)の死だ。種なしという、大奥においては存在そのものが揺るがされる身でありながら、杉下は吉宗に「めおとじゃ」と言われ、手厚い介護を受け、家重(三浦透子)に「父上」と、家治には「じじさま」と呼ばれ、家臣たちからも最後まで慕われた。自分の遺伝子は残せなかった杉下が、家族に囲まれ、本作においてもっとも理想的な形での臨終を迎えたのである。この場面を、このドラマ『大奥』は、たっぷりと時間をかけて描き、「家族」の形に希望の光を当てた。
また、片岡愛之助が演じた藤波は、原作とはかなり印象の異なる愛すべき人物となり、ふたたびの登場が嬉しいサプライズとなったが、そこには、愛之助が自身の屋号である松嶋屋の大スター、片岡仁左衛門を強烈に推すというコミカルなシーンを演じた楽しさだけでなく、こうした空気を循環させる役割をもたらす人物を演じた愛之助自身が、歌舞伎界へ一般家庭から入り人気役者となった人だという点も、非常に効いたキャスティングだった。