◆“生殖”が他人の手に握られることの暴力性を描いた

“生殖”が他人の手に握られることの暴力性を描いた
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 舞台は、赤面疱瘡なる流行り病により、男子の人口が女子の1/4にまで減少した江戸時代の日本国。いわゆる単純なジェンダー論に留まらず、“生殖”が他人の手に握られることの暴力性を、これでもかと浮き上がらせてみせた。しかも、「大奥」という鳥かごと言うべき場所で、家光(堀田真由)、綱吉(仲里依紗)ら悲しき個人の孤独にフォーカスしながら深い愛を描いて、私たち自身の持つ孤独へと共鳴させながら。

 それを、吉宗という、加納久通(貫地谷)が、吉宗の姉たちを弑(しい)ても将軍にすべきと懸けた大きな人物を柱に、問題に取り組む姿を示していった。オリジナルを大胆に組み込んで構成した森下佳子の脚本には、拍手しかない。

 くしくも新型コロナの経験と重なったために、流行り病のもとにおかれたことへの現実社会との共通点が浮かびがちだが、赤面疱瘡が差しているのはもっと奥にある病。少子化という問題を、なんとか国がコントロールしようとして瀕している今現在の状態に重なって見えてくるのである。