◆色気むんむんの斎藤工ではなく
これはぜひとも劇場のスクリーンで観てもらいたい作品だ。竹中直人監督の洗練された映像センスがすばらしいからか、それとも主演の斎藤工の演技がすばらしいからなのか。理由はどちらもなのだけれど、主人公の“声”を聴くためだけでも足を運ぶ価値はある。
8年に及ぶ長期連載を終えた深澤薫(斎藤工)は、一時はヒットを飛ばしたものの、最終巻の発行部数を減らされ、すでに終わった漫画家になっている。自分の漫画が売れないことにいら立ち、あっという間に落ちぶれる。あとは腐る方向へ一気に傾くしかない。
という役柄上、これはいつものように色気むんむんの斎藤工を必ずしも見られる作品ではない。負(腐)のオーラに包まれた深澤は、終始どよんとしていて、お世辞にも色っぽいとはいえないからだ。でもそのかわり、この深澤を通じて斎藤工の深い味わいが楽しめる“声のドラマ”に期待してほしい。