深夜は、伴の悲しみについて考えていたようだった。このところ元気のない様子の深夜を心配した鈴は、自分に何かできることはないかと訊く。深夜は鈴の気遣いを遠慮しながら、「あの人は僕だなと思って」と打ち明ける。「あの人を見てると、自分を見てるような気がしてしまって。僕が暴れないで済んだのは、鈴先生がいてくれたからです」と深夜は伴を自分に重ね、心配してくれる鈴に感謝を告げるが、鈴は「暴れてもいいのに」「泣いて、叫んで、怒ったりしてもいいのに」と返す。それこそが、伴の悲しみの本質だった。突然、最愛の妻を失い、訴訟を起こしたものの、担当弁護士からも勝つ見込みがないと突き放されてしまう。仕事もクビになり、幼い子どもは家で泣いている。相談できる友人もいないようだった。泣き叫びたいが、それができる場所が自分にはない。孤独を深めていった伴が行き着いた先が、鈴への執着だったのだ。

 鈴のもとに、一星の親友・佐藤春(千葉雄大)から連絡が入る。一星とともに海岸で伴の娘・静空(戸簾愛)がひとりで歩いているところに出くわしたのだが、静空は「お父さんが私を捨てたの」「お父さんはいつも私を捨てて、迎えに来るの」と言い、伴は必ず迎えに来ると話していた。しかし、日が暮れてきたのに伴が来る様子がない。鈴は深夜とともに海岸へ向かう。その途中、ふたりは一人で歩いている伴に出会った。これまでとは一変して「雪宮先生、申し訳ありませんでした。みなさんにも……本当にご迷惑をおかけしました」と頭を下げて謝罪する伴。何かを覚悟したような表情で立ち去る姿を見て、不安を感じた鈴は、伴を追いかける。

 伴は命を絶とうと海に向かっていた。鈴たちは止めようとするが、「こうするしかないんだ」と言い放つ。伴は、自分がやり過ぎていたことはとっくにわかっていた。しかしどうしても自分を止められず、鈴への嫌がらせをしては娘にすがりついて泣いていた。後に引けないと思い込んでいる伴は、「優しくしないでください。歩み寄られたら耐えられない」「お願いです。嫌な人でいてください。悪い人でいてください。じゃないと……ゴールがもうないんです」と言って、海に飛び込もうとする。そんなとき、伴の耳に届いたのは「お父さん!」と悲痛に叫ぶ娘の声だった。一星たちが静空を連れて駆け付けたのだ。伴は思わず立ち止まり、張り詰めていたものがプツンと切れる。そして地面に崩れ落ちながら、声の限り泣き叫んだ。伴はようやく泣くことができた。そんな伴を一星は静かに抱きしめたのだった。

 第7話に続き、伴を演じるムロツヨシの鬼気迫る演技が話題になった第8話。最後の一星に抱きしめられながらの号泣は本作のベストシーンのひとつだろう。しかしそれ以上に千明、深夜と言葉を交わすごとに動揺し、少しずつ変わっていく表情が印象に残った。「この人は最後、どうなるのだろうか」と悲劇的な結末が頭をよぎり、心も体も行き場を失って死を選ぼうとする伴のやり場のない悲しみと絶望は見ていて辛かった。