マロニエへの“襲撃”からしばらくは姿を見せなかった伴だが、今度は鈴が手話教室から出てくるところを待ち伏せする。鈴を「人殺し」だと恨む一方の伴は、周囲が鈴を庇うのが気に喰わない。だが、しつこく鈴を責め続ける伴に対し、一星の勤務先「遺品整理のポラリス」社長で、鈴とともに手話教室に通っている北斗千明(水野美紀)は、「自分がつらいからって、逆恨みするんじゃねえ!」「いい大人が……他にすることないんかい! そんなんだからいつまで経っても幸せになれないんだよ! お前と同じような境遇でも、頑張ってる奴だっているんだよ!」と正論で啖呵をきる。
伴が何も言い返せない間に、鈴は千明を引き離すようにその場を走り去る。千明は言い過ぎたと謝り、「あいつは鈴先生のことを付け回すのが生きがいになってんのかな。大丈夫?」と心配するが、鈴は、伴がマロニエで暴れた際、看護師の伊達麻里奈(中村里帆)が妊娠中と知って動きを止めたことを思い出し、「あの人、私のこと傷つけようとか殺そうとか、そういう感じじゃないような気がするんです」「彼も闘ってるような気がするんです」と、伴の境遇を思い遣る。
一方、鈴の同僚の産婦人科医・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)も、妻を出産時に亡くしていた。それをきっかけに医師を目指した深夜だが、今でも妻の分の食事まで買ってしまうなど10年経っても悲しみから抜け出しておらず、妻とともに暮らした東京の自宅も整理できずにいた。東京の自宅の掃除をした後、マロニエに戻ってきた深夜は、伴と遭遇する。どこか落ち込んでいる様子の伴は、医者でルックスもいい深夜に対し「いいなぁ。ぜ~んぶ持ってて」とこぼす。深夜が結婚しているうえで鈴と不倫しているのではと邪推し、けなそうとするが、深夜に「僕の妻は死にました……。出産の時、子どもと一緒に。……僕ひとりだけを残して。だからあなたの気持ち、少しだけわかる気がします」と言われてしまい、戸惑う伴。「わかんないよ!」「一緒にすんな!」「何ひとりで乗り越えた顔してんだよ!」と罵るが、深夜は穏やかな口調で「僕が医者になろうと思ったのは多分……復讐のためです」と話し、その意味を量りかねた伴を置いて、立ち去っていった。
そんなある日、一星の祖母・柊カネ(五十嵐由美子)が買い物中に急性心筋梗塞で倒れた。たまたま居合わせた深夜の素早い対応によりカネは一命を取り留めたが、一星は、高校生の頃に両親ともに突然事故で失い、ひとりぼっちになったときのことを思わず思い出す。駆け付けた鈴を見た一星は、すがりついて涙を流した。一星が孤独から救われたのは、遺品整理のためにやってきた千明との出会いと、祖母のカネの存在があったからだった。