◆男女逆転『大奥』の世界を象徴する徳川家重

男女逆転『大奥』の世界を象徴的する徳川家重
(C)NHK
 本作における大奥は、絢爛豪華な鳥かご、ひいては牢獄にも見える。そのことは、3代将軍家光(堀田真由)、そして綱吉(仲里依紗)の物語に痛いほど伝えられてきた。だが紀州藩主として、外から将軍として迎えられた吉宗には、そうした悲壮感はもともとなかった。しかし、男女逆転『大奥』の世界観のひとつといえる「幽閉された」空気を、もっとも表すキャラクターが第9話で登場した。吉宗の嫡子(長女)、家重である。

 その本編登場より遡ること7年。江戸市中で赤面疱瘡が発生した。吉宗の命のもと、水野(中島裕翔)がたどり着いた猿の肝を、薬として試す小川笙船(片桐はいり)だったが、戦いは失敗に終わる。「この国を滅ぼさぬために」と、小川からの骸(むくろ)の検分と、水野からの蘭学解禁の願い出を許す吉宗。このとき、蘭学に触れることを許されたのは男子のみ。流行り病により日本では男子が少ないと外国にバレぬためだったが、赤面疱瘡の撲滅は、国を滅ぼさぬ道であるとともに、女性から男性へと権力を移行させることと裏腹にも思える。いずれにせよ、これにより医学は発展していく。