◆大奥に上がる前、最後の純白を捉えるカメラ

 家の状況を見兼ねた祐之進は、伯母のツテを借りて大奥に上がることになる。それを知った信が飛んで駆けつけてきて、祐之進を詰問してにじりよる。このご時世、状況が状況だ。仕方がない選択だと釈明する祐之進の表情がなんだか曇っているというか、さっきまでの中島くんの白さを感じないなと思ったら、逆光で顔がはっきり見えないからだった。

 この逆光、彼が本来持つ色白さを肌の黒さに変える。大奥に上がる決意をした祐之進はもはや以前の彼とは違うことを照明の繊細な加減で描く。ここは武士らしく覚悟を決めたとはいえ、まだまだ純情な若ざむらいではある。信の好意に対しては相思相愛の間柄だ。

「柄じゃない」と憤る信をなだめるように祐之進は彼女の唇を自分の唇でふさぐ。若侍といいなづけとのキス(いやここは古風に接吻か)。接吻の瞬間、逆光の位置から反対側に切り替えしたカメラが、頬に日の光を浴びた中島君の白い顔半面を捉える。これが、大奥に上がる前、最後の純白ということか。