安倍晋三という人間が首相になり、長きにわたって権勢をふるい、憲法をないがしろにして「戦争のできる普通の国」づくりにまい進したが、志半ばにして銃弾に倒れた。

 在任中、安倍の野心を実現させなかったのは、我々世代が中心になって、平和のありがたみを旗印に、数の力でなんとか押しとどめたからではないか。

 だが、原爆を落とされた広島から初の首相になった岸田文雄首相は、安倍の果たせなかった「先制攻撃のできる国」に、あっという間にしてしまったのだ。

 安倍でさえ、閣議決定を多用したが、国のあり方を根本から変える安全保障問題では、一応形だけでも国民に理解を求めるという姿勢は見せた。

 だが岸田は、突然、思いついたかのように提案し、国民の意見など聞く耳を持たず、サッカーW杯で日本中が沸き立っているのをいいことに、防衛3法を閣議決定してしまったのである。