◆誰もが一生懸命生きている。けれども…

 タカシも元妻も、娘のことは大事に思っている。それなのに娘は父に会えない。そして父は、毎日のように娘を夢に見て苦しんでいる。

「“離婚するときは共同親権にしたほうがいい”とか、“いや、そのほうが問題が生じる”とか、法律的にはいろいろ賛否があると思うんです。でも私がこれを描いていて思ったのは、そんなむずかしい話ではないんじゃないか、もっとシンプルなところに答えがあるのではないか、ということでした」

 印象的だったのは、元妻が娘に対して元夫(父親)の悪口は言わないものの、表情や態度に本音が出てしまうところ。メッセージは言葉だけでないと気づかされる。だからといって元妻が「悪い」わけではないのだ。

「誰もが一生懸命生きている。父も母も娘のことを思っている。それなのに、こういうことになる現状がある。それをなるべく淡々と描くよう心がけました」

 だからこそ、離婚家庭で育った人だけではなく、誰にも「思い当たる」作品となっている。