夫婦の些細なすれ違いが亀裂となっていく様子をリアルに描いて話題を呼んだ前作『妻が口をきいてくれません』(集英社)は、第25回手塚治虫文化賞「短編賞」を受賞した。
その著者・野原広子さんが新たに手がけたのが、『今朝もあの子の夢を見た』(集英社)だ。
妻が書き置きひとつ残して7歳の娘を連れて出ていき、離婚したのは10年前。元夫で父親の山本タカシは、スーパー勤務の42歳、今も娘のさくらを思いながらひとりで暮らしている。バツイチ男の日常が描かれ、読む側もすんなり物語に入っていくと、徐々に娘に会えないタカシのつらさが伝わってくる。娘が妻に連れ去られた天気のよかった日、雨の日が大好きな娘と一緒に遊んだあの日……。
本記事では、1話と10話を紹介。また、作者の野原広子さんにお話を聞いた。