自己表現欲と商業ベースとのはざまで悩む主人公・深澤薫は、井口昇監督の『ロボゲイシャ』(09)などで共演してきた斎藤工。共同監督作『ゾッキ』の宣伝中に、斎藤がすでに『零落』を読んでおり、「好きです」と語っていたことから、スムーズに決まった。妻・のぞみは、テレビドラマ『極主夫道』(読売テレビ制作、日本テレビ系)で共演したMEGUMIに。彼女はプロデューサーのひとりとしても関わっている。ヒロインとなるちふゆ役は、早くから趣里に決めていたという。

竹中「ちふゆ役は、趣里以外に考えられなかった。髪型もショートカットにしてくれて役のイメージに合わせてくれました。どこか岸田今日子さんを思わせる、すごい俳優です。役はキャスティングされた時点で、ほぼ出来あがっています。後は衣装と風景と現場の空気が役を生んでいきます。趣里は声の音色も素晴らしいですね」

 とはいえ、女優たちを美しく撮り上げてきた竹中監督ならではのメソッドがあるのではないだろうか。

竹中「美しく撮る秘訣なんてありませんよ。みんな生の美しさです。テストは1回、すぐ本番! いきなり本番! なんてこともあります。役者には自由でいてほしいので、僕からは作り込まないようにしています。リハーサルもしませんし、編集用の素材撮りも一切しないです」