浅野いにおの漫画は、『ソラニン』(10)と『うみべの女の子』(21)が映画化されている他、『おやすみプンプン』や『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』といったシュールな作品も知られている。

竹中「どの作品もどこか浅野さんのダークな匂いを感じます。いにおさんの持つ、闇の部分に惹かれました」

 ベネチア映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した竹中監督&主演作『無能の人』も、漫画が描けなくなってしまった漫画家の物語だった。屈折した人物像に、竹中監督は魅力を感じているようだ。

竹中「映画『零落』は『無能の人』に通じるものがあるのかな……。『無能の人』の主人公は、どこかつげ義春さんのようでした。才能があるのに漫画が描けなくなった漫画家の物語です。しかし、自分の中でそういった括りにしてしまうのは想像が狭まってしまうので、決め込んだりはしませんが、自分で自分を追い詰めていくところは、『零落』と通じますね。人生、前向きに生きよう的なものは、どこか照れてしまうんです。闇を抱えている主人公に惹かれてしまいますね。ハッピーエンドよりバッドエンドのほうが好きだったりします(笑)。『零落』はある意味、現代版『無能の人』のような感じかも知れませんね。浅野さんも、つげさんの作品は好きだと思います」