出版社は売れる作品、人気作家しか求めていない。SNSを覗くと、深澤のことを酷評する声ばかりが目に入ってくる。読者にこびるような作品ばかりを描いていていいのか? 不満や焦りが募る一方の深澤は、夜の街に癒しを求める。

 そんな深澤の前に現れたのが、猫のような目をしたミステリアスな風俗嬢・ちふゆ(趣里)だった。漫画はあまり好きじゃないというちふゆとのやりとりは、深澤にとって唯一の安らぎの時間となる。お客と風俗嬢という割り切った関係のはずだった深澤とちふゆだったが、肌を何度も重ね合ううちに、次第に心の距離を縮めていく。

 漫画家・深澤の表現者としての苦悩が描かれる一方、ちふゆ役の趣里、離婚の危機にある妻・のぞみ役のMEGUMI、深澤が漫画家デビューした頃に交際していた恋人役の玉城ティナら、多彩な女優陣がみな魅力的なキャラクターとなっている。深澤の悩みが深ければ深いほど、女たちは美しく感じられる。深澤が抱える心の迷宮に、スクリーンを観ている我々も引き込まれてしまう作品だ。