元天才ヴァイオリニストと変人マエストロが地元のポンコツオーケストラを立て直すという“一発逆転の音楽エンターテインメント”という設定に、放送前は、『のだめカンタービレ』(2006年)や韓国ドラマ『ベートーベン・ウィルス』(2008年)といった作品のパクリではないかとのあらぬ疑いがかけられた。また序盤の時点では、「表舞台から姿を去り、市役所職員として働いている元天才ヴァイオリニストが、傲岸不遜な指揮者と、その父親の市長によって半ば強引に地元オーケストラで演奏することになり、演奏の喜びを再確認して表舞台に戻る」「のほほんとしたポンコツオーケストラが、冷血漢のようでいて実は熱血系で優しい面もある指揮者の指導によって生まれ変わる」「ライバルの邪魔が毎回のように入るが、うまく逆転する」といったストーリーは既視感が強く、“ありふれた音楽ドラマ”の印象は否めなかった。

 だが、ある種ベタにベタなストーリー展開は、見る者に安心感を抱かせる。特に『リバオケ』の場合、基本的に善人が中心で、嫌な気分にさせられるような悪意の持ち主が登場しない(に等しい)点も大きい。容赦ない物言いに周囲の反発を招く指揮者の朝陽(田中圭)は実際のところは「ツン」成分多めのツンデレ系キャラで、当初はややひねくれキャラだった蒼(坂東龍汰)もすっかり素直になってみんなのために率先して動くように。主人公の初音(門脇麦)に敵意をのぞかせ、ライバルキャラとして存在感を見せていた幼なじみの彰一郎(永山絢斗)も、初音の“トラウマ”になっていた「チャイコン」(チャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルト)を初音が見事克服して素晴らしい演奏を聴かせると、憑き物が落ちたように“いい子”に転身。恋のライバルになることもなく、初音のよき友人となった。初音、朝陽らの玉響(児玉交響楽団)をつぶそうと動く市議会議員の本宮(津田健次郎)も、あれこれと嫌がらせをするものの、一線は超えない。冷や冷やさせられることなく、ほっこり感を安心して楽しめるという意味では、今期は『ブラッシュアップライフ』以外は『リバオケ』くらいしかないのではないだろうか。

 また、第2話では蒼、第4話ではみどり(濱田マリ)、第6話では玲緒(瀧内公美)、第8話では穂刈(平田満)と、登場人物の抱える問題を丁寧に掘り下げながらストーリーを進め、それによって玉響の団員の絆がさらに深まっていき、よりよい演奏へとつながっていく……というところをじっくり描いているのも好評だ。かつて神童と謳われた初音も、過去のトラウマにぶつかり、それが原因で団員と対立する場面もあり、「天才と、天才ではなかった者」の対比も掬い上げながら、「音楽の楽しさ」という核で解決していく。丁寧にエピソードを積み重ねていったことで、視聴者の“満足度”も徐々に上昇していったのではないだろうか。