そんな蛙亭の“ブレイク前夜”2020年春、僕は、蛙亭の冠特番『蛙亭もういっちょ』(YouTube)のプロデューサーを担当した。今は非公開になってしまったので見ることはできないが、おそらく当時蛙亭を冠したコンテンツはテレビもラジオもなかったので初の「冠番組」だったと思う。この『蛙亭もういっちょ』が本当に面白かった。
「自分たちだけの収録」が初めてだった2人は、めちゃくちゃ気合いを入れたロケを展開してくれた。ダンスバトル、激辛ラーメン大食い、三点倒立をしながらローラのモノマネ、恋バナ、お寺ロケ、漫才、ドラマ風コント、河川敷でギャグバトル、AVインタビューパロディ……恐ろしいことにこれを丸1日で撮りきったのだ。もちろん2人は嫌な顔ひとつせず、というかそれが普通なんだと思い込んで全力で挑んでくれたのだが、2人が売れた今、あのロケスケジュールがいかに常識外れだったかはきっと本人たちにバレている。あのときは無理させてすみません。
『蛙亭もういっちょ』では、イワクラさんの研ぎ澄まされたセンスと圧倒的なパッション、中野さんの類い稀な演技力と猟奇的な性格が余すとこなく発揮されていて最高だった。収録が終わってから「やっぱり蛙亭は売れる」と確信したことを覚えている。今さら後出しで書いてすごい恥ずかしいけど本当にそう思った。『蛙亭もういっちょ』は新型コロナの影響をモロに受け、2回目の収録をすることは叶わなかったのだが、今でもあの番組に携われたことを誇りに思っている。そして2人が売れれば売れるほど「TPは早くから蛙亭に目をつけていた」と言ってもらえるので、僕のためにももっと売れて欲しい。
僕が初めて蛙亭を知ったのは2018年の『ABCお笑いグランプリ』だった。決勝のグループステージで2人が披露していた「逆だワン!」というコントは衝撃的だった。茶色い全身タイツを着た中野さんが「犬」として、ご主人イワクラさんのオン・オフの使い分けに「逆だワン!」とツッコんでいくのだが、そもそも犬がツッコミをやっている時点でだいぶ逆だろと思った。百聞は一見にしかず、というか、言葉で説明するのが難しいので本人たちのYouTubeにアップされているこのネタをぜひ観てほしい。