◆紙のフリップネタの弱点を克服

――ネタ披露前のVTRで「今までフリップ芸をしてきたんですけれども、今回ちょっと一新しまして、良いところを全部詰め込んで違った形での見せ方にこだわったんです」「僕からすると同じフリップ芸なんで」と本人が語り、「フリップの境界線」とキャッチフレーズがつけられていました。

<紙のフリップのネタを使ったネタは、ピン芸人の世界では非常に多いです。しかし、フリップのネタは弱点が2つあります。

1つ目は、あの大きな紙です。あの大きな紙のフリップは、日常生活に存在していません。日常生活にないものを、出演者の都合で持ち出してきているのです。そもそも不自然なんです。「紙芝居」という形で出すのも、令和では苦しくなってきましたし…。

2つ目は、用意されたフリップがどうしても予定調和に見えてしまうことです。ほとんどの漫才やコントには台本があって予定通りに進むものですが、お喋りや演技で予定調和感をなくしています。しかし、あのフリップをめくっていく作業はどうしても、用意された感が出てしまうのです。

ところが、田津原さんの開封動画のカードは、日常生活にある「フリップ」でした。これにはやられました!

しかも、「カードがダブる」「レアじゃないカードを雑に見せていく」「キラカードがある」など、開封動画じゃないとできないくだりがふんだんに盛り込まれていました。もし、大きな紙のフリップであのネタを作ったとして、カードがダブったくだりがあっても、あのようにはウケないと思いますし、それこそ出演者の都合に見えてしまいます。

そして、開封するドキドキ感が、予定調和の雰囲気を壊してくれました。観客は田津原さんと一緒に「次なんだろう?」とワクワクしながら見ることができたと思います。(本人はもちろん演技ですが)>

――なるほど!開封動画という設定をうまく活かしていました。