長年の習慣というのは、深く考えなくても身に沁みついていますよね。朝起きてから出かけるまでのルーティンしかり。車に乗ってエンジンをかけて出庫するまでの目や手、足の動きしかりです。体が自然と覚えてくれるというのは大いなる恩恵です。
その一方、自分のやり方が確立してしまうと、慣れ親しんだ年月が長いほど変更するのが大変になります。勇気も必要です。
たとえば私にとって最近の大きな変化の一つに「手帳」があります。私は20年以上にわたり、同じ会社の同じ規格のダイアリーを愛用してきました。手帳の前半には月間カレンダーがあり、後ろにはウィークリーのタテ型が記載されているというタイプ。カレンダーに仕事の予定を書き込むと、その月がどれぐらいハードなのか全容がつかめます。「月末は通訳業務が立て込んでいるから、今週中に前倒しで予習しよう」と見通しが立てられるのですね。ただ、カレンダーのスペースは小さいので、ウィークリーの方に同じ内容を書き写し、補足もしていました。
しかし、この手帳には難点もありました。それは「カレンダーページとウィークリーページが離れているため、転記の際、記載漏れが起こりうる」というもの。カレンダーの方を見ながら、後ろのウィークリーにその都度、書き写すのですが、何度か漏れが生じたことがあったのですね。プライベートであればまだしも、仕事スケジュールに抜けがあったら一大事です。よって、とても気を遣ったのでした。
昨年末のとある日。たまたまツイッターで見かけたのが、現在使っている手帳の広告でした。それは手帳の上半分と下半分がわかれており、月間カレンダーとウィークリーを「同時に開いて眺められる」というスグレモノ。つまり、カレンダーを開いた状態ですぐ真下に該当の週ページを開けられるのです。常に月間スケジュールを確認できるのはありがたい!迷わず購入です。
使い始めるや「もっと早くに出会っていたら」と思いました。「今までのあの転記労力って何だったのかな」とも。それぐらい重宝しています。
実は今回のような「変化」、通訳予習でも最近ありました。具体的には「単語リスト作成」です。
それまで私は「単語の暗記法は手で書いてこそ!手を動かすことで記憶に定着する」とかたくなに信じていたのですね。よって、予習ではルーズリーフに単語リストをひたすら手で書いていました。それはそれで良かったと思います。確かに「音読しながら手を動かすこと」は脳の活性化となり、覚えることにつながったからです。
しかし欠点もありました。それは「並べ替えがきかない」ということ。一度紙に書いたら入れ替えができません。五十音順にもアルファベット順にもできない。リストが膨大であるほど、現場に持参しても該当の語を探し当てるのが難しくなるのですね。
先輩や同僚のみなさんがエクセルでリストを作っておられるのは、長年見てきました。ただ、私はもともとエクセルが苦手。使い方を熟知すること自体が大いなるハードルで、二の足を踏んでいたのです。が、この「並べ替え不可問題」はストレスでもあります。そこで、一念発起して使うことにしたのでした。
いざ活用してみると、その効率に驚くばかり。表示も英日・日英が瞬時に変えられますし、五十音順アルファベット順もあっという間です。何しろキーボード入力は早いですし、リストが延々と増えても気になりません。むしろ、「おぉ~、今度の会議で使う単語リストは200にもなった」という妙な達成感(?)につながります。いえ、頭の中で暗記するのが最重要なのは言うまでもありませんが・・・。
というわけで、長年の習慣もいざ変化を加えてみると想像以上に容易であったりします。そのことがわかっただけでもうれしいです。変化を恐れず前進、ですよね!
(2023年2月28日)