話は変わるが、先日、Amazonプライムで映画『ナワリヌイ』を見た。

 今年のアカデミー賞のドキュメンタリー部門で最有力視されているようだ。

「彼はプーチンロシア大統領の最大最強の政敵、反体制の指導者である。

 46歳のナワリヌイは、ロシアの汚職や、彼が『狂人』と呼ぶプーチンについて厳しく世に知らしめ、ロシアでは多くの支持を得ている。ロシア政府と関連のあるとみられる攻撃者から2度にわたって化学染料を浴びせられ、右目の視力は悪くなり、2020年には飛行機の中で倒れた。彼はほぼ死にかけたが、ドイツに避難させられ、そこで科学者たちは、彼が神経剤ノビチョクで毒殺されそうになったと結論づけた。ノビチョクはロシア政府が優先度が高いとみる暗殺対象に使ってきたものである。

 ドキュメンタリーでは、ナワリヌイの回復と、彼を毒殺しようとしたとみられるロシア政府の高官を突き止める追究過程を追う。ナワリヌイが暗殺未遂犯の1人に電話をかけ、ロシア政府関係者になりすまし、毒殺未遂の経緯を説明させるという異様な場面が映し出される」(朝日新聞DIGITAL3月3日12時00分)

 これは、ニコラス・クリストフがニューヨーク・タイムズに寄稿したものである。

 プーチンが殺したいほど憎んでいるのに、彼はモスクワに戻り、逮捕され、現在も獄中にいる。だが、

「ナワリヌイはいまもなお、ソーシャルメディア用の素材を仲間たちに託し続けている。プーチンがこれを読んでいるかもしれないので方法は明かさないが。また、彼はこれまでと変わらず、服従はしていない。ロシアによるウクライナへの全面侵攻から1年に際し、ナワリヌイはプーチンの『ウクライナに対する不当な侵略戦争』について激しい非難を公表し、『ロシアは軍事的な敗北を喫している』と訴えた。

 どういうわけか、あらゆることを経てなお、彼はユーモアのセンスを保っている。

『私は独房に1人でいても、1日に少なくとも3回笑う』。彼は最近、刑務所内のひどい音楽と食事をテーマにそう投稿した。『私は葬式の場でも、一番陽気な人間なんだ』」(同)
 強い人だ。こういう人がプーチンを倒すのだ。まだロシアには希望はある。西側の人間は、早くナワリヌイを救い出して、プーチンの最高の対抗馬として、大統領にしなければいけない。ロシアには希望がまだある。そう思わせてくれるドキュメンタリーである。アカデミー賞は間違いなくこれだ。

 さて、私は温泉が好きだ。冬の時期、みなかみの法師温泉「長寿館」に雪を見に出かける。

 夜、積もった雪が屋根から落ちる「ドサッ」という音を聞くのが好きだ。温泉は混浴。湯は少し温い。だから入ったら1時間ぐらいは出られない。たまにだが、若いカップルが入ってくることがある。

 女性の白い肌が湯気の中で浮き立つように見える。そんな姿を見ながらゆるゆるとまどろむのが好きだ。

 死ぬならこういうところで死にたい。そう思わせる温泉である。

 だが、お湯の交換を1年に2回しかしていなかったというバカ者の温泉宿があったというから、温泉好きには許せない話である。

 その温泉旅館は福岡県築紫野市にある温泉旅館「二日市温泉 大丸別荘」という。二日市温泉というのは奈良時代から約1300年続く古湯で、大丸別荘も幕末に創業したという高級旅館だそうだ。

 昭和天皇、美空ひばり、吉永小百合も泊ったという。そんな名旅館に問題が発覚したのは昨年8月だったそうである。

 二日市温泉の客が体調不良を訴えて検査したら、「レジオネラ症」と診断されたという。そこで大丸別荘に立ち入り検査したところ、基準値の2倍のレジオネラ属菌が検出されたというのである。

 この細菌は河川や温泉などに生息して、重症の場合は肺炎になるそうだ。旅館側は湯の交換や塩素注入は適正だったと説明していたが、昨年11月に県保健所が再検査をしたところ、大浴場の浴槽から基準値の3700倍ものレジオネラ属菌が検出されたというのである。

 旅館側は、湯の入れ替えは年に2回、消毒も不十分だったと認め、記録する管理簿も改ざんしていたと明かしたそうである。

 これはひどい! 文春が社長に話を聞こうとしたが、直接は会えず、電話でのインタビューになったという。

 最初の指導で改善できなかったのかと問うと、

「いやそれは甘く見ていたからで、指示は全て私がしていました。お湯を入れ替えて、完全に(浴槽を)干す作業を怠っていました」

 温泉にうじゃうじゃ菌が泳いでいる。そう思うと心が沈む。ときどき、変な臭いがする温泉があるが、そういうところは湯交換が十分ではないのだろう。

 困ったものだ。