筆者は日本の歴史というものもそれほど信じていない。そんなものは、どうにでも想像できてしまうからだ。織田信長が何をした、文献が残っているからといって、その文献が真実だと、どうしてわかるのだろうか。今でいう小説家が書いたものかもしれない。誰が他者や後世につないだかによって、いくらでもコントロール可能だと思えるからだ。
それは宗教も同じであって、そもそも宗教というもの自体、宗派などさまざまな形があるとしても、行いや発言が冒涜であるかどうかの匙加減は、神ではなく、その神を祀り上げた創始者の意思を反映させたものであり、実はそこには神の意思など、そもそも接続されていないといえるのではないだろうか。
ベネデッタが神を崇拝しながら、与えられた宗教に背くことは、宗教においては冒涜であっても、神においては冒涜かどうかなんて誰が決めるのだろうか。
ちなみに、全く違うアプローチではあるものの、無神論者の主人公が神を訴えるインド映画『オーマイゴッド ~神への訴状~』(2012)によれば、神は存在しているが、宗教は人間が作り出したもので、そこには神の意思など不在で偽りだと言い切っている。これは宗教国家のインドにおいては、なかなか冒険的な描き方だが、神と宗教の接続への違和感という点では共通したテーマといえるだろう。
『ベネデッタ』
2月17日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開
監督:ポール・ヴァーホーベン
脚本:デヴィッド・バーク、ポール・ヴァーホーベン
原案:ジュディス・C・ブラウン
出演:ヴィルジニー・エフィラ、ダフネ・パタキア、シャーロット・ランプリング、ランベール・ウィルソン
2021/フランス・オランダ/131 分/R18+/原題:BENEDETTA
公式サイト: marvel.disney.co.jp/movie/antman-wasp-qm