神と宗教はどう接続しているのか、そもそも冒涜とは何に対してなのか……

 神(イエス)の姿を見たと言うベネデッタ。それは本当なのか、それとも虚言なのか……。結論としては、少なくとも本人は、それが真実だと思っている。
しかし、男性優位主義の時代や修道女という立場の中でそれを他者に信じさせるために虚言を重ねることで、どんどん視点を曇らせていくことから、作品によっては“悪女”として描かれるかもしれない主人公だ。

 しかしヴァーホーベン監督の過去作『ショーガール』(1995)や『氷の微笑』(1992)なども、主人公はそれぞれ目的を持っていて、そこに突き進む過程に綺麗ごとだけでは通用しないことを徹底的に描いていた。その点では、今作もヴァーホーベンらしいキャラクター構造といえるだろう。

 ヴァーホーベンという監督は、主人公をいわゆる映画的なヒーローやヒロインといった型にはまった存在として決して描かない。完全なる善も悪も不在の作品が多いのだ。

 善も悪も表面上に見えている部分が全てではない。視点を変えれば善も悪になるし、悪も善になる。現実社会というもの自体がそうではないだろうか。わかりやすいものほど、嘘なのかもしれない。