バフィー吉川の「For More Movie Please!」
第5回目は『ベネデッタ』をget ready for movie!
反キリスト的な書籍『Jesus of Nazareth』も発表している監督、ポール・ヴァーホーベンが『ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア』を元に、実在した修道女の物語を映画化した『ベネデッタ』が、2月17日から公開中だ。
ハリウッドで制作された『ロボコップ』(1986)の劇場公開版は、暴力描写を大幅にカットされていたこともあるし、コミックやアニメ、ゲーム化もされていることもあるからヴァーホーベンをヒーローアクション監督として認知している人もいるかもしれないが、同作は紛れもなく暴力に満ちたバイオレンス映画。
『SPETTERS/スペッターズ』(1980)や『ブラックブック』(2006)、第89回アカデミー賞においてイザベル・ユペールが主演女優賞ノミネートされた『エル ELLE』(2016)など、容赦ない人物描写、だけどそれが社会の本質を切り取っているような作風が、多くの人々の心に爪痕を残す。それ故に多くの“敵”も作る映画人であり、当然ながら今作においてもカトリックからは非難が殺到。過去には映画を撮らせてもらえず、国を追い出されることもあったが、80歳を過ぎても全く丸くならず、いまだにブレないヴァーホーベン節が今作においても炸裂している。
ヴァーホーベンは、描写がキツイかもしれないが、社会に蔓延する性と暴力性の境界線や軍国主義など、ただ現実社会をそのまま描いているだけに過ぎない。それが問題視されること自体が、社会システムの不具合を証明しているようだ。
【ストーリー】
17世紀のペシアの町(現在のイタリア・トスカーナ地方)。幼い頃から聖母マリアと対話し奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは、6歳で出家しテアティノ修道院に入る。純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助ける。様々な心情が絡み合い2人は秘密の関係を深めるが、同時期にベネデッタが聖痕を受け、イエスに娶られたとみなされ新しい修道院長に就任したことで、周囲に波紋が広がる。民衆には聖女と崇められペシアでの権力を手にしたベネデッタだったが、彼女に疑惑と嫉妬の目を向けた修道女の身に耐えがたい悲劇が起こる。そして、ペスト流行にベネデッタを糾弾する教皇大使の来訪が重なり、ペシアの町全体に更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていた……。