◆ 服に着られない、鈴木亮平の所作の美しさ
もう一つ、特筆すべき点があります。それは浩輔を演じる鈴木亮平さんの所作が終始美しく、派手なハイブランドを着こなしていてもまったく下卑た印象にならなかったということ。むしろ、仕立ての良い上質な服をまとうにふさわしい身のこなし。
ハイブランドの服は微細なシルエットやカットワークが美しいので、立ち姿や座っている時の姿勢がさまにならないと「着こなす」よりも「着られている」というイメージがついてしまいます。ともすれば全身ハイブラ武装は成金イメージにもなりかねないのに、冒頭から品の良さを感じたのは他でもない鈴木亮平さんの体躯や姿勢の為せるわざだったのでしょう。
ハイブランドに限らずですが、服を着こなす上でとても重要な要素は身につける本人の凛々しさということを忘れてはならないなと、改めて身の引き締まる気持ちにもなりました。
映画『エゴイスト』をこれから観る方も2回目以降の鑑賞の方も、映像の美しさと作品の投げかける「愛」に触れながら、ストーリーとファッションの関係にも注目すると一つ楽しみが増えるかもしれません。
<文&イラスト/角佑宇子>
【角 佑宇子】
(すみゆうこ)ファッションライター・スタイリスト。スタイリストアシスタントを経て2012年に独立。過去のオシャレ失敗経験を活かし、日常で使える、ちょっとタメになる情報を配信中。インスタグラムは@sumi.1105