◆龍太(宮沢氷魚)と出会ってからの服装の変化

全身をハイブランドで固める浩輔は、社会的な成功を果たす一方で、どこか物悲しい雰囲気を漂わせています。そこに突如現れたのが、パーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)。浩輔は自身とは対極的な純粋さを持つ龍太に惹かれ、愛を育んでいくことで物語が進んでいきます。

龍太との関係が進展すると鎧であったはずのブランドコーデもその派手さがどんどん抑えられて、浩輔の心情の変化が服装から見てとれる。興味深いポイントでした。

◆さりげないシーンでも絡む、重要な心理描写とファッション

印象に残る着こなしが次々と登場し、彼を引き立てる服装に共通した特徴が浮かび上がっていきます。作中では色とりどりのファッションが展開されているかと思いきや、特徴的な“色合い”に統一感がありました。

なかでもネイビー・ブラウン・ベージュはとくに頻出していたので、浩輔というキャラクターを象徴するキーカラーとなっていたのではないでしょうか。

映画『エゴイスト』鈴木亮平のファッション2
ネイビーという色は知性と品格を象徴します。そして、ベージュ・ブラウンは穏やかさ、安心感をイメージさせる色。冒頭こそ派手な印象を持つ浩輔でしたが、龍太との愛を育むにつれ内側にある優しさや献身的な愛、懐の深さが垣間見えました。まさに色にすると落ち着きの感じるネイビーやブラウン、ベージュといった色が似合う人物像です。

お話の中におけるファッションの位置付けはそこまで重要ではないと思わせながらも、時折さりげないシーンで重要な心理描写を服装に絡めているのも観ていて感動しました。