小中監督が青春時代に体験した多くのことが、本作にはさまざまな形になって詰め込まれている。

 主演の上村侑と髙石あかりは『さよなら、バンドアパート』(21)でも共演しており、今回のキャスティングにつながった。デジタル世代の若いキャストたちは、今回のフィルム体験をどのように受け止めたのだろうか。

小中「クランクイン前に彼らには8ミリカメラの扱い方をレクチャーしましたし、撮影現場でもその都度、教えながら進めました。僕をはじめ、メインスタッフはみんな8ミリ世代なので、必要以上に熱くなって、8ミリのことを説明していたように思います。僕らのそんな様子も、彼らの役づくりの参考になったんじゃないですか(笑)。フィルムならではの色合いを好み、PVや短編映画を撮る人は今もいますが、フィルムで撮る機会は今後ますます減っていくでしょうね。今回の劇中映画シーンは8ミリ撮影だったこともあり、何度でも撮り直せるデジタル撮影にはない緊張感がありました。そのことでスタッフとキャストの間にも一体感が生まれたように感じます。デジタル撮影にはない体験だったと思います」