今回の『あちこちオードリー』のオープニングは、これまでの森脇イジりにスムーズに接続するとともに、あくまでもリスペクトの対象(「偉人」)であるとの前提を押さえるものになっていた。森脇も後輩からのイジりをひとまず“寛大”に受け止める体勢を見せた。これでもう、彼を面白い存在として安心してテレビの前で笑う準備は半ば整ったと言ってもいい。言い換えれば、共犯関係に巻き込まれかけている。

 さらに、森脇は先の「ナメられてるのわかるからね」発言に続けて、「君らもナメてるやろ?」と若林に問い返した。これに若林は「まぁ、ナメてますけども」といたずらっぽく笑って認めた。

 そんな若林の返答に、森脇は大げさに机を叩いて、いま俺は怒ってます的なポーズを笑顔で見せた。怒りを示す動きとは真逆の笑顔、この動きと表情の食い違いが、このやり取りがあくまで“お笑い”であることを見る側に確認させる。森脇の受けが、若林の“失礼”を“失礼ボケ”にする。

 一連の会話を通じて、同じ事務所の先輩後輩にあたる森脇となすなかにしの関係性が、他事務所のオードリー(の少なくとも若林)との間にも延長される。これで、テレビの前で笑う準備は完全に整った。完全に共犯関係に入った。

 こんな導入を経て、森脇は番組で何を語ったのか。そしてオードリーやなすなかにしはそれをどう面白くしたのか。