さらに不審なことがあるという。
「一点目は、安倍氏の身体に入ったはずの銃弾が一発、見つかっていないことだ」(文春)
警察庁関係者がこう話す。
「司法解剖の結果、右前頸部の銃弾は右上腕骨に至って止まったとされ、これは体内から見つかっている。一方、致命傷となった左上腕部の銃弾が消えているのです。弾丸が身体を貫通して体外に出た際につく『射出口』は確認できていないことから、体内に留まったはずなのですが……」
鉛の弾が体内で割れたり砕けたりして消失してしまう可能性はほとんどないという。
解剖でもわからないところまで流れたという可能性もなくはないようだが、一国の元首相が撃たれて亡くなったのだから、医師たちが途中で諦めるということは考えにくいはずだ。
さらに2点目は、事件当日救命にあたった奈良県立医科大学付属病院の医師の会見内容と、司法解剖の結果が大きく食い違うというのである。
「会見で救命医は『首の銃創は二カ所で、心臓まで到達する深さ。心臓の壁には弾丸による大きな穴が開いていた』と説明。一方、監察医による司法解剖の結果が発表された際、心臓の穴には触れられなかった」(社会部記者)
文春は、こうした不審な点がいくつもあるのに、警察側が国民に対してきちんと説明しないのはおかしいと追及している。
「今回の事件を受けて警察庁が公開したのは、昨年八月の警備についての検証報告だけ。他の疑問点については黙殺していることが、かえってSNSや一部メディアなどで『第二のスナイパーがいた』『警察は不都合な真実を隠している』などとする“陰謀論”をはびこらせる結果となっています」(同)
山上のほかにもスナイパーがいたということになれば、第2のジョン・F・ケネディ暗殺事件のようだが、その可能性は今のところ低いだろう。
だが、文春が実証実験までして、安倍元首相を死に至らしめた銃弾が警察発表と食い違う理由を、警察庁は速やかに国民に合理的な説明をする必要があることは当然である。
戦後最悪のテロ事件の解明のためには、一点の曇りもあってはならないこと、いうまでもない。(文中敬称略)