しかし、当然ながらそう簡単に名企画は生まれるものではありません。着想時点では「この組み合わせは斬新で面白そう」と思っても、いざ具現化していくところで無理や矛盾が判明して、企画として成立しないことがほとんどです。

『君の名は。』が凄いと思うのは、「入れ替わり」と「タイムスリップ」の掛け合わせを思いついただけでなく、それを絶妙なバランスでストーリーに落とし込んでいるところだと思います。

 厳密に言うと『君の名は。』にも矛盾に感じる点はいくつかあります。

 しかし、ほとんどの視聴者にはその矛盾を感じさせていないし、ほとんどの視聴者にとって理解しやすいストーリーになっています。多くの視聴者が気になってしまう矛盾点は取り除かなければいけないし、逆に全ての矛盾点を解消しようとすると話が複雑化して、視聴者の理解が及ばなくなってしまう。このバランスを整えるのは至難の業です。この作品の脚本作りは、緻密で繊細で気が遠くなるような思考との戦いがあったに違いありません。

 それを成し遂げた新海監督並びに製作スタッフの方々には頭の下がる思いです。それでは今日はこの辺で。