◆「愛は身勝手」ずっと頭の中をぐるぐる回り続けている

映画『エゴイスト』
『エゴイスト』より
 大切な人のために、何か自分にできることをしたい。大切な人のかけがえのない人のことを、同じくらい大切にしてあげたい。自分の中に確かに存在する相手を想う気持ち。でもそれは、本当に相手のため、なんだろうか。「愛は身勝手」、ポスターに記されたその言葉がずっと頭の中をぐるぐる回り続けている。

 14歳で母を亡くし、田舎町でゲイである自分を押し殺しながら育った浩輔。現在は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仲間たちと自由な日々を謳歌している。ある日彼は、シングルマザーの母を支えながら働く、パーソナルトレーナーの龍太に出会い、互いに惹かれ合っていく。閉塞した格差社会で出会うべくして出会った二人のロマンスは、やがて思いもよらぬ運命を辿(たど)ることになる。

映画『エゴイスト』
 柔らかな自然光に彩られた映像の絵画のような美しさといったら。吐息を感じるほど近くから撮られたカメラワークや、セリフっぽさのない何げない会話によって、温かな彼らの日常がドキュメンタリーかと錯覚するほどナチュラルに映し出されている。