第95回アカデミー賞で主要8部門9ノミネートを果たし、ほかにもゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞など、多くの映画賞において『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と並んで今年の最有力候補と謳われる映画『イニシェリン島の精霊』が日本でも1月27日より公開中。コリン・ファレルの終始困った表情が印象的な作品だ。
1920年代のアイルランド、アラン諸島の架空の島、イニシェリン島を舞台に、ふたりの男の友情の亀裂を全編通して描いた作品なのだが、本作で描いているのは、アイルランド内戦だけに限らず、内戦というものを紐解いていくと些細なことがきっかけで争いが勃発してしまうこと、それが実にバカバカしいことであるかというメタファーにもなっている。それに加えて、恋愛における関係破綻も描いているのだ。
説明されているわけではないが、コルムはおそらく同性愛者であり、その違和感のはけ口がないことにもイラ立ちを感じているのかもしれない……。というのは、全体を通してマーティン・マクドナー監督が描きたかったことではあるかもしれないが、キャラクターの心情の変化においては、さまざまな理由が考察できる。
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