◆俳優としてもユニークな町田啓太

 一方でイエナガのキャラクターがユニークなのは、ただただデキる男であるわけではないところ。彼は何せ売れない漫画家。できるのに売れないという矛盾が彼をユニークにする。最新放送回「社会を変える超頭脳データサイエンティストって?」では、結局描いてきた漫画はもちろん採用されず、イエナガは思わずお茶目な表情をしたりする。

 こういうお茶目な瞬間を見ると、町田啓太の演技にはものすごい振り幅があるなと思う。ひとつは元気はつらつで無鉄砲なキャラクターを演じるとき。もうひとつは相手への細やかな心配りを徹底する超誠実キャラを演じるとき。どちらもあの爽やかなハニカム町田印の笑顔が共通している。

 最近のわかりやすいところで、Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』(2020年~)の金髪チャラ男と『チェリまほ』の黒沢を比べてみると、役柄にはかなり大きな開きがあるが、どちらも町田啓太らしい、町田くんにしか出すことのできない色がある。

『漫画家イエナガ』でも町田啓太は、教養バラエティ番組なのにむしろ演技を極めてくる。彼は俳優としてもユニークな人である。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu