「多くのがんサバイバーの声をどうぞ活かしてください」(50代・男性)
ライフネット生命保険はこのほど、がん経験者572人に「日々の生活」「お金」「仕事」などについての実態を調べるアンケートを実施しました。
そして冒頭の言葉は、回答者から寄せられた、切実な声。
医療技術の進歩や早期発見などによって、がんの5年相対生存率は6割以上にアップしています。がんにかかる人の3割は働き世代です。
がん治療をしながら仕事をするには、さまざまな「困りごと」が起きますが、経験者はどんなことに困っており、またもし自分が経験者になったら、それらをどう解決したらいいのでしょう?
この記事では、そのアンケート結果が紹介されたマスコミ向けイベントの様子とともに、アンケートの内容をお伝えします。
終盤では病気治療などでの傷跡や、変化した外見をカバーする、「カバーメーキャップ」の体験もリポートしています。
「働きながら、がん治療をする」時代に
イベントは8月1日、がんを治療しながら働く人のニーズに合わせた「ライフネットのがん保険 ダブルエール」の発表会として都内で開かれました。
ライフネット生命は、2010年に日本で初めて、病気などで働けなくなったときに一定の保険金が支払われる、個人向けの「就業不能保険」を発売しました。
イベントに登壇した岩瀬大輔社長は「支払われた保険金のうち59%が、がんによる就業不能でした」と語ります。(以下、カッコ内は全て岩瀬さん)
がんにかかる人の約3割は、現役世代なのです。そして、東京都福祉保健局「がん患者の就労等に関する実態調査」によれば、がんにかかった75%の人は、退職せず仕事を続けています。
がん治療中は「収入が減り、治療費がかかる」
「がん」にはかつて、「死にいたる病」というイメージがありましたが、早期発見ができれば、仕事に就きながら治療、復帰することも可能な病気になっているのです。
そうなると、問題になってくることの一つが「収入」。
「572名のがん経験者の方に行ったアンケートの結果、がんにかかった後では2割くらい収入が減ってしまうことがわかりました」
ライフネット生命のアンケートによると、回答者のがん罹患前の平均年収は415万円だったのに対し、がん罹患後には332万円となっています。
収入減少に至った理由は、次のような結果に。
- 休職…35%
- 業務量のセーブ…33%
- 退職…25%
- 転職…17%
- 残業ができなくなった…15%
- ならし出勤…10%
- 役職変更や配置転換…10%
- 流動的な休憩取得…3%
その他…18% 健康なときにはなかなか想像できませんが、手術後に体力が落ちる、抗がん剤治療で具合が悪くなってしまうなどで、同じペースで仕事ができないこともあります。
病気を理由に退職した場合はもちろんですが、体調不良や治療で仕事を休む、業務量を減らすなどすることが、収入減につながってしまうのです。役職を降格する、正社員からパート社員勤務に勤務形態を変えた例もありました。
がんなどの病気に罹患した場合、私たちには公的医療保険のサポートもあります。そこで、公的制度で経済的に足りたかどうか?もアンケートでは質問しています。
▽公的制度の利用で、金銭面は足りたかどうか?(緑色は「十分足りた」「どちらかと言えば足りた」、オレンジ色は「どちらかと言えば足りない」「まったく足りない」
全体平均では、「足りた」「足りない」の割合はほぼ半分ずつとなりました。正社員に限って言えば、「十分足りた」(15%)、「どちらかと言えば足りた」(40%)となり、55%の人が「足りた」と答えています。一方で、自営業・自由業の7割、パート・アルバイトの6割が「公的制度では不足」と回答しています。