NHKドラマ10『大奥』の第4話が放送され、<三代将軍家光・万里小路有功編>がクライマックスを迎えた。エピローグにあたる初回からそうだったが、第4話で改めて強く感じられたのが、本作におけるキャラクターと演者との“声”の相性の良さだ。それによって、運命(さだめ)に堕ちていく“人間”の多面的な姿を、わずか3話からなるエピソードでも、強く深く感じさせてくれた。

◆福士蒼汰の経を読みあげる声の違いにドキリ

福士蒼汰の経を読みあげる声の違いにドキリ
(C)NHK
 大奥で身を寄せ合う有功(福士)と家光(堀田)だったが、1年経っても家光は懐妊しなかった。春日局(斉藤)は新たな側室として捨蔵(濱尾ノリタカ)を大奥に呼び寄せ、家光は千代姫を授かる。

 笑顔で周囲と接する姿に、「わしらとは出来が違う」と称えられる有功。だが心中は穏やかではなかった。「このお方(家光)こそが自分が救うべき人であった」と道を見出したかのようで、それは相手を救うというより、有功自身にとっての生きるよすがだったのだ。表側はきれいに繕いながら、どんどんと濁った業の深みへ堕ちていく有功。

 その深さをはっきりと感じさせたのが、福士の声だ。家光と捨蔵が褥(しとね)を共にする間にあげていた経の声に心底ドキリとした。思い返すに、第2話での有功の登場シーンは、赤面疱瘡で亡くなった農民にあげていた経の声だった。体中に染みわたってくるような、「ありがたい!」と拝みたくなる経を聞いた瞬間、福士の有功に魅了された人も少なくないのではないだろうか。その同じ有功のものとは思えぬ恐ろしい響きを帯びた経。

 自らの心をズタズタにしていった有功は、ついに爆発する。それだけでは、抜け殻になっていたかもしれない。しかし玉栄(奥智哉)に苦しみを吐露し、涙として外へと流し、さらに寝たきりとなったお楽の方様(捨蔵)の現状を前にして、自らを取り戻す。日に照らされ(お世話を)「わたしがやる。やりたいんや」と上を向く有功の、すっきりとした顔と声にこちらまで気持ちが晴れやかになった。