授業のあと、水沢は「和解なんて考えもしなかった」と、勝ち負けににこだわっていた自分を素直に反省し、真中を褒める。一方、真中は「でもそれは、弱い立場の人たちを助けたいからだよね。純粋にそう思えるのってすごいことだと思う。僕にはとてもできない」と返す。そして自分が「口先だけ」の人間であることを認め、周囲を見返すためだけに弁護士になろうとしていたという本音を明かしながら、「僕も、いい弁護士にはなりたい。水沢君とはちょっと違うかもしれないけどね」と心からの笑顔を見せる。歪んだエリート意識から生まれたコンプレックスの檻から、真中が解放された瞬間だった。真中は最後に、司法試験合格のためには必要ないと柊木の実務演習の授業を辞めようとしている照井雪乃(南沙良)に「実務演習だけど、無駄ってほどじゃないかもよ」と声を掛けるほどの変化を見せた。
今回も柊木の実務演習を軸としたストーリー展開だったが、「勝てる弁護士が、いい弁護士じゃない」「依頼人に寄り添えることがいい弁護士」という柊木の“理想”に加え、「判決を勝ち取る弁護士は二流。一流は争わず、和解させる」という里崎教務主任(小堺一機)の持論も打ち出しながら、しかし現実はそう簡単にはいかない、だからこそ「互譲」という選択肢があるということを生徒たちに授業として体験させたかったという柊木の目的は、本作の方向性を示すものだったともいえる。
その点は、第4話の隠れたハイライトでもある、研究家教員・藍井仁(山田裕貴)が柊木に見せた初めての動揺ともつながるところだ。柊木と藍井は指導方針の違いで度々衝突してきたが、柊木の実務演習の課題をたびたびくさす藍井は、今回は「生徒たちには“いい法律家”になってほしい」という柊木に対し、「いい法律家」の定義を苛立ちげに聞き返す。すると柊木から「あなたにはないんですか? 理想とする法律家の姿が」と率直に聞かれ、一瞬黙り込んで目を反らしたあと「考えたこともありません」とその場を去ろうとした。そして、柊木が今回提示した課題が「過去の判例を見れば答えは明白」「和解しか答えのない裁判」だったことを藍井は授業として意味がないと切り捨てようとするが、柊木は「そう簡単にいかないのが現実」「立場や考え方が違っても、どこかで折り合いをつけなきゃやっていけませんよ」と微笑む。理想を語るわりに、意外と現実的でもある柊木に、試験の採点を手伝おうかと声を掛けられると、「け、結構です」と戸惑う藍井だった。