今回は和訳レッスンを一休みし、「警察」関連の婉曲表現をご紹介します。ぜひ肩の力を抜いてお読みください。

日本語で「警察」関連の婉曲表現にはどのようなものがあるでしょうか。ちょっと思い出そうとしてみたのですが、なかなか思い浮かびませんでした。やっと思い浮かんだのが「サツ」と「デカ」。「サツ」は「警察」の「察」のことだと容易に推測できますが、「デカ」はどうでしょうか。国語辞典で調べてみると「デカ」とは「刑事」のことで、その説明として「明治時代、刑事巡査の着た「かくそで(角袖)」の逆さ言葉の略」とありました。さすがに「逆さ言葉」の「略」は推測しにくいですね。

ネットで「警察」の類義語を調べてみると上記以外にも「お回り」「その筋」「岡っ引き」「ポリス」などが出ていました。「岡っ引き」とは古い言葉ですが、「犯罪の捜査や犯人の逮捕に当たった者」のことを指します。

さて、英語には「警察」関連の婉曲表現がたくさんあります。中には婉曲表現というより蔑称といったほうが近いものもありますが、ここではそれらを除いてご紹介しましょう。というのも、間違って口から出てしまうリスクを考えたら、あえてそのリスクを負うこともないですからね。

policeを婉曲的に表現するのは、一般市民にとってはpoliceにお世話になること自体が恐ろしいことのように思えるからといわれています。それは日本でも英語圏でも同じなのですね。さて、では英語のpolice関連の婉曲表現を見てみましょう。

○police officer
19世紀初期にpolicemanの代わりに婉曲表現として使われ始めたのがpolice officerです。police officeが「警察署」のことですから、わかりやすいですね。呼びかけの言葉としてofficerとだけ言う場合があります。

○law-enforcement officer, law-enforcement official, law-enforcement agent
これらは「法執行官」のことを指していう言葉ですが、「警官」の婉曲表現としても使われています。警官の主な役割は「法と秩序の保持」ですから理にかなった表現といえるでしょう。

「警官」が身につけている物の色を使った婉曲表現もあります。例を見てみましょう。

○boys in blue, men in blue
アメリカでは警官の制服が青色であることから、19世紀からこのように言われるようになりました。略してbluesということもあります。

○redcap, snowdrop
redcapもsnowdropも“かぶり物”の色を使った「憲兵」を意味する婉曲表現です。前者はイギリスで、後者はアメリカで使われています。

○limb of the law
limbとは「手足(の1本)」とか「腕」という意味の言葉ですから、直訳すれば、「法の手足」となります。18世紀から「警官」のことをこう表現したりするようになりました。ただし現在では皮肉っぽく言うときにこう言うようです。

○Smokey Bear、smokey bear
Smokeyとは、米国で森林火災防止の掲示に描かれた森林警備隊員の服を着たクマのぬいぐるみの絵のことですが、「州の交通警官」を意味する婉曲表現としても使われます。略してbearと言うこともあります。

○cop
「警官」のことをこういうことがあります。play cops and robbersで「泥棒ごっこをする」という意味になります。copを「逮捕する」という動詞で使うこともあります。例えば、cop him stealing some moneyといえば、「彼が金を盗んでいるところをつかまえる」という意味になります。

○G-man, G-Man
日本でも昔、『Gメン75』というテレビドラマがありました。75から推測できるとおり1975年から放映されていました。英語としてもやや古い言い方になりますが、FBI捜査官のことをG-manといいます。このG-manの複数形がG-men(Gメン)ということになります。なお、G-manのGはgovernmentの頭文字を取ったものです。