もちろん、刺されているとはいってもダミーである。明らかに嘘だとわかる殺人現場。津田もどうやらドッキリ的なものに仕掛けられていると察した様子で、思わず笑ってしまっている。一般的なドッキリであればここでネタバラシになるところかもしれない。が、今回は違う。津田が犯人を見つけないと終わらないシステムである。
この物語のシチュエーションによると、ペンションの電話線は切られている。携帯電話も圏外だ。町につながる唯一の橋が大雨で流され、ここは陸の孤島になってる。いわば密室状態になったペンション。津田もまた、謎を解くまで解放されないという意味でこの状況に閉じ込められてしまったわけだが。
犯人の候補はペンションのオーナーとほかの宿泊客たち。津田はディレクター役の女性にうながされて宿泊客らのアリバイを調べたり、事件現場を調べたりする。ただ、津田はなかなか探偵役を飲み込もうとしない。「何で俺が解決せなアカンの? 何のやつこれ?」と抗ったり、自分が犯人だと疑われると「テレビのアレやろ。なんで俺が犯人やねん」と設定を離れてメタ的に発言したりする。ヒントになりそうなことが出てきてディレクター役の女性に「何かわかることはありませんか?」とうながされても、探偵役に乗り気でない津田は謎を解こうとしない。というか勘が悪いので適切な答えを返さない。物語が前に進まないため「何かわかることはありませんか?」と繰り返し女性に聞かれたりもする。
ただ、少しずつ自分で謎を解いていくなかで、津田は少しずつ探偵っぽい言動をしはじめる。探偵役に染まりはじめる津田のグラデーションが見ていておもしろい。で、犯人を追い詰める場面では関西弁ではなく標準語になり「犯人はあなただ!」と喝破。名探偵の誕生である。
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