◆③JSA:南北分断映画の原点の一つにして“頂点”の一作

’99年、38度線上の南北共同警備区域(Joint Security Area)で起こった射殺事件。北は韓国軍の襲撃だと憤り、南は北の拉致からの脱出だと主張する。消えた一発の弾丸。食い違う当事者たちの供述。誰が誰を殺したのか。

 最大の見せ場は、板門店で実施された韓国軍兵長のスヒョク(イ・ビョンホン)と、朝鮮人民軍中士ギョンピル(ソン・ガンホ)が同席した聴聞会だ。

 お互い友情を秘めながらも、上官たちを前に憎み合わなくてはならない状況に耐え切れず、すべてを暴露しようとするスヒョクを殴り倒し、「朝鮮労働党万歳! 金正日将軍万歳!」と叫ぶギョンピルの鬼気迫る姿は、「事実を隠してこそ平和が保たれる」という物語の核心を突く名シーンだ。

 マニア的視点で言えば、注目すべきは北側詰所に置かれたカセットデッキ。A面B面の音楽が自動で切り替わるオートリバース機能に、そこにいる人たちの意思にかかわらず平和と戦争を不意に行き来してしまう、南北分断の悲しいリアルが投影されている。

(発売元:ショウゲート 販売元:アミューズソフト DVD税抜価格:2980円 ©myungfilm2000)