ドラマ「愛の不時着」がブームになったが、北朝鮮と韓国の対立を素材にした映画やドラマの秀作は他にも沢山ある。そんな作品を独断で紹介!
◆①工作 黒金星と呼ばれた男:南北分断の超裏側を描く実在のスパイの物語
’92年、核開発疑惑が持ち上がっていた北朝鮮。実態を探るため、国家安全企画部(現・国情院)の指令を受けたコードネーム「黒金星」ことパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は一介の事業家を装い、「南北合同の広告事業」を口実に北朝鮮の対外経済委員会リ・ミョンウン所長に接近する。
その裏で、体制維持をしたい北の当局と、既得権益を手放したくない南の政党が結託し、広告事業を阻む。両国に翻弄されるにつれ、2人の関係はいつしか奇妙な連帯に変わっていき……。
実話を基にしたリアリティもさることながら、この作品の驚くべき点は、すべての場面が見どころであることだ。緊迫感が伴う探り合いはもちろん、盗聴、録音などの諜報戦はまさに精神のバトルアクション。
北朝鮮潜入シーンや金正日総書記役(キ・ジュボン)の凄まじい再現度にも唸ってしまう。リ所長を演じるイ・ソンミンの感情を抑制した小刻みに震える演技も天下一品だ。そして騙し合いから変化する2人の関係も、物語に深みを持たせる。
「なぜ私を信じたのですか?」「信じる以外に方法がなかったから」――なんといっても圧巻なのはラストシーン。分断を超えた男同士の絆に熱い涙がこぼれるはずだ。