『Blue Ocean』というアルバム名自体が、男性中心のシーン=レッドオーシャンに対する逆張りとして態度表明されていたが、本曲では「SupremeとRIMOWAのキャリー」で機材を運びながら「BalenciagaのTrack履いて今夜もFly」し、全国のクラブを行脚する「カーレース」のごとき姿勢が、それによって稼ぐカネの描写――「ブクブク泡立て」「ハラハラ舞い散る福沢諭吉」――といったリリックにより実に見事な動的運動として表現されていた。
加えて、その運動を支えているのは、活舌の良いリズミカルなラップである。
相変わらずリリックとラップの相乗という観点で、彼女の技術は群を抜いている。同様に、突如年末にリリースされたLil’ Leise But Goldのアルバム『喧噪幻想』も、クラブの喧噪の中で煌めく身体運動と艶やかで幻想的なボーカル表現がドラマティックに出会ったという点において屈指の傑作であろう。
「朱は紅くなり」「手の甲Blood Line」「Eyeline滲んでも」といった皮膚一枚に迫るようなきめ細やかな筆致が、とろけるような発音とともに、日英の言語の壁を越えリズムそれ自体を融解させていくようなマジックとして私たちを恍惚とさせる。