“女性とラップ”を切り口に2022年の国内ラップミュージック/ポップミュージックシーンを総ざらい。ビート/フロウ/コラボレーションという3つの観点で分析した前編に続き、今回後編ではリリック/サウンドクラウド・シーン/アイドル/男性アーティスト、という4つの観点を用意した。2010年代後半から続いた動きが総括され、新たな時代の始まりを予感させた2022年の動きについて論じる。
Ⅳ. 群を抜いたリリックとラップの相乗事例
才能あるリリックがラップと渾然一体となり、躍動感を生んでいた事例についても挙げたい。
麻凛亜女、Henny K、Tomiko Wasabiによる「V.A.N.I.L.L.A.」は公式と共犯的に画策された明確なフェミニズム視点が話題を呼んだが、既存のヒップホップ価値観に対するカウンターとしてはAYA a.k.a PANDA「Balenciaga」に見られた高度な技術も指摘すべきである。